西川氏とは別にもう一人気になった人がいる。


大和川レコードという人で、彼はアコースティック
ギターを持っていて歌など歌うのだろうか?でもこの吉村氏
との演奏でそれを行うのもどうなのだろう、などと思っていた。


演奏を始めると、彼は、小さくあまり音数の多くないコードの
ようなものをぽろぽろとあまり大きくない一定しない音量で、
弾き始めた。数分これが続くので、こういうものなんだろうと思いつつ、
眠りに陥りそうな気分で(殆ど寝ていなかったため)聴いていると、
途端に(というほど境界は全く明確ではなかったのだけれど)ことばが、
つむぎだされ始めた。これには、違和感を感じた。もちろん吉村氏の
電子音との組み合わせということであるのだけれど。


だが、次第に彼の歌を聴いていると、これは、と思うようになった。
明確な歌詞やコード演奏だけを取ると彼の音は、なんてレガシーな、
といわざるを得ないスタイルではあるのだけれど、彼の歌は、音響派
以降の音の解像度を求めるような微細さを孕んでいる。それはsoの、
もしくはそのトヨダエリコという人に感じたものだ。この人は、声を
音色として捉え、デジタルでなくアナログな仕方で、そうした解像度を
表現し得ている。もちろん彼にそのような意識があるかどうかは
分らないのだけれど。


もう少し他のものも是非聴いてみたい。