バガボンド

バガボンド1~28 / 井上雄彦集英社

  • 一気読みしました。
  • 新しい表現を獲得しようといろんな試みが出てきているのが面白い。逆に物語の意味論的な構造については、古風な部類に入り、それが吉川英治の原作をそのまま描こうとしているからなのか、それとも彼自身の考えによるものなのかはわからない。
  • また、その試みの一つに加わるものかはわからないが、笑いとシリアスの感覚を同居させる描き方については、以前から見受けられ、それが深化しているように見える。この経緯は、タランティーノの感覚と類似するといえるかもしれない。
  • 「緊急特集 井上雄彦 BRUTUS 7月号」にて内田樹が彼の身体運用の表現について興味深い論を寄稿していた。この前半で内田氏は、この作者の身体運動の表現の正確さについて語っていた。思えば、過去の作品であるスラムダンクにおいても、この作者は執拗に身体運動について描きながら洞察を続けていたとも言え、彼は身体運動の探求とそれを受容することがもたらす情動の強さ、もしくは、漫画というメディアのフォーマットにて、この身体運動とその受容のあり方をいかに定着させるかに腐心してきたと言えるかもしれない。